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東京高等裁判所 昭和55年(行コ)88号 判決 1985年4月24日

控訴人・附帯被控訴人 エイ・エス・エス株式会社

被控訴人・附帯控訴人 杉並税務署長

代理人 須藤典明 村上憲雄 ほか二名

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  附帯控訴人(被控訴人)の附帯控訴に基づき、原判決主文第二項を次のように変更する。

附帯控訴人(被控訴人)が附帯被控訴人(控訴人)の昭和三六年七月一日から昭和三七年六月三〇日までの事業年度の法人税につき昭和三九年八月一七日付けでした重加算税賦課決定における、重加算税対象所得金額を五〇〇万円として算出される税額を超える部分のうち税額一五万一三〇〇円を超える部分を取消す。控訴人(附帯被控訴人)のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用中、原審において生じた費用は一〇分してその一を被控訴人(附帯控訴人)の負担、その余を控訴人(附帯被控訴人)の負担とし、当審において生じた費用はすべて控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。

事実

第一当事者の申立

一  控訴人・附帯被控訴人(以下「控訴人」という)代理人

1  控訴事件につき

(一) 原判決主文第二項及び第三項を次のように変更する。

被控訴人・附帯控訴人(以下「被控訴人」という)が、控訴人の昭和三六年七月一日から昭和三七年六月三〇日までの事業年度の法人税につき昭和三九年八月一七日付でした再更正処分のうち、所得金額を一九五三万三二六七円として算出される額を超える部分及び重加算税賦課決定を取消す。

被控訴人が控訴人の昭和三七年七月一日から昭和三八年六月三〇日までの事業年度の法人税につき昭和三九年九月三〇日付でした更正処分、過少申告加算税賦課決定及び重加算税賦課決定を取消す。

(二) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

旨の判決を求める。

2  附帯控訴事件につき

附帯控訴棄却の判決を求める。

二  被控訴人代理人

1  控訴事件につき

控訴棄却の判決を求める。

2  附帯控訴事件につき

(一) 原判決中主文第二項を次のように変更する。

被控訴人が、控訴人の昭和三六年七月一日から昭和三七年六月三〇日までの事業年度の法人税につき、昭和三九年八月一七日付でした重加算税賦課決定について、重加税対象金額を五〇〇万円として算出される税額を超える部分のうち、税額一五万一三〇〇円を超える部分を取消す。

(二) 附帯控訴費用は、控訴人の負担とする。

旨の判決を求める。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次に付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

なお、事実摘示、理由説示を通じて、原判決が用いたのと同一の略称を使用する。

一  控訴代理人の陳述

1  原判決中、昭和三六年期の課税処分に関する判断、昭和三七年期の課税処分のうち、認定利息に関する判断並びに昭和三八年期の課税処分のうち、昭和三七年一〇月一五日支払の訴外李憲道に対する造成費一〇〇万円、同日支払の訴外崔奉性に対する造成費二九〇万円、同日支払の人夫賃三一万五九〇〇円の否認及び認定利息に関する判断については不服申立の対象としない。

2  昭和三七年期の課税について

籏野福寿から買入れた土地が、農地であり、農地法所定の許可がなく、代金の支払、目的土地の引渡しがなかつたとしても、発生主義によれば、売買契約の成立により、代金支払債務につき、買掛金勘定に計上することができるものというべきである。

3  昭和三八年期の課税について

(一) たな卸計上もれについて

第二の土地について、八一九坪を超える部分は、いずれも京王電鉄との境界についての紛争のため、期末において、控訴人所有に係る土地の範囲、地積を確定し得なかつたため、たな卸に計上することができなかつた(権利確定主義)ものであり、昭和三八年期の期末以後において控訴人が売却することができた第二の土地は、日野市平山六丁目四番五雑種地六九平方メートルほか九筆の土地であるが、いずれもたな卸に計上した、前記八一九坪の一部である。

(二) 造成費等の否認について

(1) 被控訴人において、仮空経費として否認している、李憲道らに対する造成費及び人夫賃の合計二五八七万九三〇〇円の支払が全く無かつたとすれば、その後、二本松地区その他の土地が、道路、下水路を完備した住宅地として販売され、現在住宅団地を形成している事実を無視した結果となり、不合理であることは明らかである。

(2) 控訴人は、昭和三八年期において、日南から第四の土地を六〇〇六万四二〇〇円で仕入れ、同年期において、少くとも四四八七・八二平方メートル(一三五九・九四坪)の土地(仕入金額五七一万一七四八円相当)を売却した。

ところで、第四の土地の簿外仕入金額は四二一万五九〇〇円であるところ、右簿外仕入金額のうち、昭和三八年期の売上額に対応する四〇万九〇七万(算式は次のとおり)は、第四の土地の売上原価とみるべきである。

4,215,900× 5,711,748(円)/60,064,200(円)=400,907(円)

右の次第であるから、昭和三七年一〇月一五日の李憲道に対する造成費一〇〇万円、同日の崔奉性に対する造成費二九〇万円及び同日の人夫賃三一万五九〇〇円の合計四二一万五九〇〇円のうち四〇万九〇七円は、第四の土地の売上原価として、損金の額に算入すべきものである。

(3) 控訴人は、昭和三六年期において六二万〇四四五円、昭和三七年期において一一万二六〇四円、昭和三八年期において三八万三〇〇〇円のヒユーム管を購入して、土地造成に使用し、昭和三八年期においては更に、中島邦郎にヒユーム管埋設工事を依頼し、同工事に伴い同人より五六一万四四〇〇円相当のヒユーム管を購入し、篠塚建材株式会社より同様に一四七万二九七〇円相当のヒユーム管を購入し、清水組に橋染工事を依頼したことに伴い一三一万五〇〇〇円相当のヒユーム管を購入(昭和三八年期の購入分合計は八七八万五三七〇円)したが、被控訴人は、右昭和三八年期分のうち、控訴人が直接購入した前記三八万三〇〇〇円を除き、その余をすべて否認した。

しかし、控訴人が昭和三六年期から昭和三八年期の間に、造成工事のために現実に使用したヒユーム管は、二六〇三万二一五〇円に相当する量であつて、昭和三八年期における前記ヒユーム管の購入を否認することは、現実になされた造成工事を否定するものであつて不当である。

(三) 売上計上もれについて

控訴人が、被控訴人指摘の売上金額を、昭和三九年期の売上として計上したことが誤りであるとすれば、被控訴人は、控訴人が提出した昭和三九年期の確定申告に対し、国税通則法二四条に基づき更正をなすべき義務を負うところ、控訴人のなした右申告を適法と認め、同法七〇条所定の、更正をなすべき期間を徒過したのであるから、控訴人が、売上計上基準日を引渡日として申告した昭和三八年期及び昭和三九年期の納税申告は、いずれも被控訴人によつて、適法な申告として承認されたものと判断するのが合理的であり、合法的である。被控訴人の更正処分は、この点において首尾一貫せず、法定課税主義に反するものであるから、当然取消されるべきものである。

(四) 前払費用の計上もれについて

岡田秀一ほか一五名に対する売上が、昭和三八年期における売上として計上されるべきものであるとすれば、被控訴人が主張する前払費用の計上もれを算定するために、造成割合(原判決一七丁裏から一八丁表にかけての一覧表中の「造成割合」欄)を算出するに当たつては、昭和三八年期における売上とされるべき右土地の地積を差引いた地積を基準として(右表中「造成割合」欄中の分子となるべき地積)なすべきところ、被控訴人はこれをしていないのであるから、この点においても、被控訴人のなした課税処分は首尾一貫しないものである。

右のように、岡田秀一ほか一五名に対する売上を昭和三八年期における売上として造成割合を算出し、これに基づいて前払費用を算定すると、直接費の前払費用は四三九万一二二二円、一般管理費の前払費用は、一三六二万四一六三円になるべきである。

4  被控訴人の後記陳述2について

控訴人が、被控訴人主張のとおり、土地仕入代金七二一万六〇〇〇円を買掛金に計上したことは認めるが、右が、過少申告加算税の対象になることは争う。

また、国税通則法において、重加算税と過少申告加算税が、各別の規定によつて定められていることは、憲法八四条(租税法律主義)に基づき、別個に課税する趣旨を明らかにしたもので、重加算税の中に過少申告加算税の部分が包含されている旨の被控訴人の主張は、憲法の原則を無視した誤つた解釈であつて失当である。

二  被控訴代理人の陳述

1  昭和三八年期における架空造成費の一部を損金に計上すべき旨の控訴人の主張について

控訴人の、昭和三八年期の法人税確定申告者添付の附属明細書(甲第三号証の一)中、負債の部仮受金欄には、林静名義の仮受金として八五万九二八〇円の記載がある。仮受金勘定は、簿記会計上金銭を受領したが、これをいずれの勘定科目に経理すべきか未確定のときに、一時的に利用する仮の負債勘定である。右仮受金勘定に記入したものが売上金等と判明したときには、直ちに売上勘定等に振替経理されるべきものであり、遅くとも決算時においては当然修正して売上勘定等に振替経理されるべきものである。

訴外林静に対する第四の土地の売却は昭和三七年一二月一四日であるから遅くとも同日までには右仮受金の振替処理がなされた上売上に計上されるべきものであつて、これをなすことなく仮受金として残していることは、決算時において売上に計上されていないことになる。訴外林静に対する売上を記帳した売上帳に売上年月日が記載されていないことに徴しても右売上計上もれが存することは明らかである。

そうであるとすれば、控訴人が主張するように売上原価を損金に計上すべきものであるとしてもこれを上廻る売上計上もれがある以上所得金額に異動を生ずることはない。

2  附帯控訴部分について

国税通則法六八条一項の規定による重加算税及び同法六五条の過少申告加算税は、いずれも申告納税方式による国税を過少に申告した納税者に対する行政上の制裁として課せられるものであるところ、重加算税は、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装する等の不正手段を用いた悪質な過少申告に対して特別に重い負担を課するものにすぎず、両者は全くその性質を同じくするものである。したがつて、同一の更正に係る加算税であるかぎり、過少申告加算税、重加算税のいずれを賦課するにしても、処分としては同一性を有するというべきであり、重加算税の中には過少申告加算税の部分が包含されていると解すべきである。

本件において、控訴人が土地仕入代金七二一万六〇〇〇円を買掛金に計上したことが、隠ぺい仮装に当たらないとしても、過少に申告していたものである以上、本件重加算税賦課決定のうち、過少申告加算税一五万一三〇〇円(仕入否認七二一万六〇〇円に対する過少申告加算税相当額)に関する部分は適法なものである。

第三証拠の提出、援用、認否 <略>

理由

当裁判所の判断は、次に付加するほかは、原判決理由説示のとおりであるからこれを引用する。当審における証拠調べの結果を検討しても、右判断を覆すに足りる事実はあらわれていない。

一  原判決五九枚目裏一〇行目から一一行目にかけて、同六三枚目表六行目、同六五枚目表七行目、同六七枚目表七行目、同六九枚目表八行目から九行目にかけてそれぞれ「原告代表者」とあるのをいずれも「控訴人代表者(原審及び当審)」に改める。

二  昭和三七年期における仕入金額否認について

農地法所定の許可を停止条件として締結された農地の売買契約においては、許可のあつたときから、売買目的土地について権利移転の効力を生じ、これに対応する代金支払義務が確定するのであつて、控訴人が籏野から買つたとする土地の売買契約については、右許可はもとより、許可の申請手続すらなされず、代金の支払も全くなされていないものと認められるのであるから、発生主義の前提である代金支払債務の確定がないものというべきである。

三  昭和三八年期のたな卸計上もれについて

たな卸計上の対象となる資産は、当該事業年度の期末において、販売することを目的として所有する物品であれば足り、当該物品が、たな卸計上の時において現実に販売可能な状態にある必要はなく、また、所有している土地の境界について、隣接地の所有者との間で紛争を生じたとしても、そのことによつて、直ちに土地の所有権が失われるものではなく、販売のため保有している土地の商品としての性質に変動を生ずるものでもないから、第二の土地について、京王電鉄との間で境界の争いがあり、京王電鉄の申立てによる仮処分決定により、その土地について宅地造成の工事ができないため、昭和三八年期のたな卸計上の時において分譲することができなかつたとしても、第二の土地をたな卸資産から除外すべき理由とはならないものというべきである。

四  昭和三八年期の造成費等の否認について

控訴人は、否認された造成費の支出がなかつたとすれば、現になされている造成工事は到底なし得ないものである旨主張し、当審における控訴人代表者尋問の結果中にその旨の供述があり、右代表者尋問の結果により真正に成立したものと認められる<証拠略>にもその旨の記載があるが、右供述及び記載は、いずれも具体的な事実、造成費算定の根拠並びに裏付けとなるべき資料を伴つたものではなく、これをもつて右主張を認めることはできないし、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。

そうであるばかりでなく、控訴人が造成費等として計上した二五八七万九三〇〇円のうち、李憲道又は崔奉性に支払われたとする七八〇万円、人夫賃三一万五九〇〇円が現実にはこれらの者に支払われたものでないことは控訴人の認めているところであり、訴外中島邦郎に対して支払つたとする六九二万九四〇〇円、訴外篠塚芳治に支払つたとする一四七万二九七〇円及び人夫賃として支払つたとする九三六万一〇三〇円について、いずれもその支払いを裏付ける<証拠略>が信憑性を欠き採用し難いものであることは、この点に関する原判決理由説示(原判決理由二4(四)、(五))のとおりであり、この判断は、当審における証拠調べの結果によつても改めるべきところはないのであつて、控訴人が計上した造成費等のうち以上の支出については虚偽の申告と断ぜざるを得ないところ、本件に現れた全証拠をもつてしても、右否認にかかる造成費につき、昭和三八年期の真実の造成費の支出として、どのように誰に対して支出されたかについて、これを認めるに足りる何らの資料も見当らない。

五  昭和三八年期における架空造成費の一部を損金に計上すべき旨の主張について

主張の事実のうち、控訴人が造成費等として計上したもののうち、李憲道及び崔奉性に対する造成費三九〇万円及び昭和三七年一〇月一五日支払の人夫賃三一万五九〇〇円の合計四二一万五九〇〇円が、控訴人が日南から簿外で買入れた第四の土地の代金として日南に支払われたものであることは当事者間に争いがない(原判決理由四4(二))。

<証拠略>を総合すると、控訴人は日南から、昭和三七年七月一六日第四の土地(一万四三〇一坪)を、代金総額六〇〇六万四二〇〇円で買受け、昭和三八年期中にうち四四八七・八二平方メートル(一三五九・九四坪)を売却した事実が認められる。

そうであるとすると、造成費等として計上して、日南に対する第四の土地の簿外仕入代金の支払であるとして否認されたことについて争いがない前記四二一万五九〇〇円のうち、三八年期中に売却された地積に相応する四〇万九〇七円

(4,215,900×1,359.94÷14,301)は、控訴人が主張するように昭和三八年期の売上原価として損金に算入されるべきものということができる。

ところが、<証拠略>によると、控訴人は第四の土地の一部である宅地一二二・一四平方メートル、山林一九平方メートルを、昭和三七年一二月一四日訴外林静に代金一一二万九二八一円で売却している事実が認められるところ、<証拠略>によると、控訴人は昭和三八年期の確定申告において、八五万九二八〇円を訴外林静からの仮受金として計上(附属明細書負債之部)していることが認められる。控訴人と訴外林静との間において、右土地の売買代金の受渡のほかに金員の授受がなされるべき関係にあつたものと認めるに足りる証拠はないから、右仮受金は、右土地の売買代金の受渡に係る処理としてなされたものと推認される(右土地の売上を記載した帳簿である<証拠略>にも右仮受金受領の記載があり、それが売買代金として入金処理された形跡はない。)ところ、右金員の受領が仮受金として負債の部に計上されている事実をもつてすると、右訴外林に対する売上金一一二万九二八一円は、昭和三八年期の売上金として計上されていないものと推認することができる。

してみると、右売上原価(四〇万九〇七円)の計上もれに拘らず、これを上廻る売上計上もれが認められる結果、右売上原価計上もれを理由として昭和三八年期の処分を取消すには至らないものというべきである。

六  昭和三八年期の計上もれについて

控訴人は、昭和三八年期の売上計上もれとされた売上金は、昭和三九年期の売上金として計上されているところ、昭和三九年期の確定申告に対し更正をすることなく、昭和三八年期の申告についてのみ売上計上もれとして更正をするのは首尾一貫しない旨主張するが、昭和三八年期の売上金額につき控訴人が、被控訴人の認定、処分に対しこれを不当として抗争していることは<証拠略>に照らし明らかなところである。このように一方において昭和三八年期の課税について被控訴人の処分を争いながら他方において昭和三九年期の同一事項について更正を求めることは当を得ないものであり、その結果昭和三九年期の確定申告につき更正の時期を失つたとしてもこれによつて適法になされた昭和三八年期の課税処分の効力を失わせるものではないというべきである。

七  昭和三八年期の前払費用の計上もれについて

売上計上もれの土地に相応する造成費等を前払費用として算入すべきものであることは控訴人主張のとおりである。

しかし、主張の前払費用を売上原価として控除した結果、昭和三八年期の控訴人の所得金額が六七六五万七〇五七円となる(ただし前判示の売上原価四〇万九〇七円を控除し、訴外林静に対する売上計上もれ一一二万九二八一円を加算するとその額は六八三八万五四三一円になる)ことは引用に係る原判決の理由(理由四11)説示により明らかなところであり、被控訴人が昭和三八年期の課税処分において右前払費用を控除しなかつたからといつて、これをもつて当然に右課税処分を違法とするのは当たらない。

八  附帯控訴について

国税通則法六五条の規定による過少申告加算税と同法六八条の規定による重加算税とは、ともに過少な所得申告に対する行政上の制裁として賦課されるもので、重加算税は、過少申告加算税賦課の要件のほかに、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺい、仮装し、隠ぺい、仮装したところに基づいて納税申告書を提出するという不正手段を用いたとの特別の事由がある場合に、過少申告加算税におけるよりも更に重い一定の率を用いて得られる額の制裁を課するものであるから、重加算税を賦課する処分は、過少申告加算税を賦課する処分を含んでいるものと解するのが相当である。

したがつて、重加算税賦課の処分が、その要件を欠き効力を有しないと判断される場合であつても、過少申告加算税賦課の要件が存在する場合は、その限度においてなお処分の効力を有するものというべきである。

これを本件についてみると、昭和三七年期の仕入金のうち、訴外籏野福寿から第一の土地を買受けたものとして計上した七二一万六〇〇〇円を仕入金として損金に計上することはできず、同年期における控訴人の所得金額の申告において右金額に相当する額の過少申告となることは、引用に係る原判決の理由説示(原判決理由三2)及び本判決理由第一項記載のとおりであり、右過少申告について重加算税の賦課加重要件が認められないことは原判決理由説示(原判決理由三4)のとおりであるから、右過少申告額七二一万六〇〇〇円について重加算税を課する旨の決定は違法というべきであるが、右金額について過少申告加算税を賦課する限度においてはなお効力を維持すべきことになるから、右決定は右過少申告額に対する過少申告加算税相当額である税額一五万一三〇〇円(本判決別紙記載のとおりの計算により求められる。)を超える部分についてのみ取消されるべきである。

これに反し、右過少申告額に対する重加算税賦課決定の全部を取消した原判決は失当であり、附帯控訴は理由がある。

以上のとおりであるから、控訴人の本件控訴は理由がないものとして民事訴訟法三八四条に従つてこれを棄却し、附帯控訴は理由があるから、原判決主文第二項を本判決主文第二項のように変更することとし、訴訟費用の負担につき同法九六条、 八九条、 九二条を適用した上主文のとおり判決する。

(裁判官 吉江清景 川上正俊 渡邊等)

重加算税対象税額

重加算税額

原処分

5,153,080円

1,545,900円

原判決で維持された額

2,126,000円

637,800円

原判決で取り消された額

▲3,027,080円

▲908,100円

上記取消額3,027,080円が過少申告加算税の対象となるからその税額は3,027,080円×5×1/100=151,300円となる

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